お稲荷様・稲荷神を祀る神社仏閣には系統がありますが、主に神道系と仏教系に分かれると言われています。
実際のお稲荷さんの系統は、神道系でもいくつかあり、仏教系でもいくつかあります。
お稲荷さんの系統について説明します。
お稲荷様の系統
お稲荷様を祀っている神社仏閣の系統は概ね神道系と仏教系にわかれます。その中でも神道系は伏見系(大社系・伏見稲荷大社系統)と笠間系(笠間稲荷神社系統)に分かれ、仏教系は、豊川系(豊川稲荷・豊川閣妙厳寺)と最上系(最上稲荷山妙教寺)に分かれています。
またそれぞれに属さない・属さないであろう寺社もあります。
図形にすると下記のようになります。
*最上稲荷は「高山稲荷」という名称になっている場合もあります。ただし「高山稲荷」となっていても必ずしも「最上系」となる訳ではありません(青森県 高山稲荷神社 等)。
この4系統によるお稲荷様は、「伏見稲荷神社」「笠間稲荷神社」「豊川稲荷」「最上稲荷」という名称で大小の寺社があります。
最も「最上稲荷」が一番少ないように思いますが、データが無いためどこが一番多いかは不明です。
なお神道系のお稲荷様の総本社とされているのが伏見稲荷大社で、すべての稲荷神社の総本社とされていますが、神社の成り立ちから伏見稲荷神社よりも創建が早いとされる笠間稲荷神社を含めないという説もあります。
日本三大稲荷に見るお稲荷様の系統
日本三大稲荷と呼ばれる寺社は、実は14もあります。
14の寺社のうち、一般的には下記の4つのうち3つが日本三大稲荷とされることが多いです。
- 伏見稲荷大社
- 豊川稲荷(円福山豊川閣妙厳寺)
- 笠間稲荷神社
- 祐徳稲荷神社
他の寺社が日本三大稲荷になる場合は、地域によって異なる傾向にあります。
ただ伏見稲荷大社・豊川稲荷(円福山豊川閣妙厳寺)の2つはどの場合でも含まれることが多いです。
また「日本三大稲荷神社」となると豊川稲荷や最上稲荷は外されます。
この14の寺社がどの系統かまとめたのが下記です。
寺社名 | 系統 | 創建 |
伏見稲荷大社 | 大社 | 708~715年 (711年説あり) |
笠間稲荷神社 | 笠間 | 651年 |
豊川稲荷 (豊川閣妙厳寺) |
豊川 | 1441年 |
最上稲荷山妙教寺 | 最上 | 752年 |
祐徳稲荷神社 | 大社系 | 1687年 |
竹駒神社 | 大社系 | 842年 |
志和稲荷神社 | 大社系 | 1057年 |
鼻顔稲荷神社 | 大社系 | 1558年~1570年 |
太皷谷稲成神社 | 大社系 | 1773年 |
箭弓稲荷神社 | 不明(大社系?) | 712年 |
千代保稲荷神社 | 不明(大社系?) | 794年~1185年) |
瓢箪山稲荷神社 | 不明(大社系?) | 1583年 |
源九郎稲荷神社 | 不明(大社系?) | 1585年 |
草戸稲荷神社 | 不明(大社系?) | 807年 |
不明としている神社は自ら稲荷神を祀るようになったか、どこから勧請を受けたのか不明なものがありますが、恐らくは大社系(伏見系)と思われます。
箭弓稲荷神社・千代保稲荷神社・源九郎稲荷神社は源氏色の強い神社で、源氏は元々伏見稲荷神社を祀っていたと言われており、大社系統でもおかしくありません。
草戸稲荷神社は空海が創建に関わっているとされており、空海は伏見稲荷大社(当時は伏見稲荷神社)の創建にも関わっているとされており、大社系になるかもしれません。
瓢箪山稲荷神社は、伏見城から「ふくべ稲荷」を勧請したとされており、場所的にも本来は伏見稲荷神社との繋がりがあってもおかしくありません。
稲荷神の系統
お稲荷様の系統は神道系と仏教系があり、主に4つに分かれていて、諸派もあることは書きましたが、祀る神様が異なる場合があり、神様の系統が複雑です。
神道系の稲荷神
神道系の稲荷神はほとんどが宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと・倉稲魂命と書く場合もあり)ですが、他の神様の場合もあります。
- 宇迦之御魂命(うかのみたまのみこと):神社系で最も多い
- 保食神(うけもちのかみ):神社系・宇迦之御魂命と同一視される場合もあり
- 上記以外の神
宇迦之御魂神と倉稲魂命は基本的に同一の神様とされていますが、保食神は宇迦之御魂神と倉稲魂命と同一視されることもあれば別の神様とされることもあります。
また神社によっては稲荷神として豊受姫命を祀るところもあります。豊受姫命は宇迦之御魂神と同一視されることもあれば別の神様とされることもあります。
この辺り宗教家・宗教研究家でも意見が割れるところであり、神社によっても異なります。
仏教系の稲荷神
仏教だから仏様ではないのか?と思うかもしれませんが、仏教でも神様は存在しています。
仏教の場合、豊川稲荷は稲荷神として吒枳尼天(だきにてん・豊川稲荷は「吒枳尼真天・だきにしんてんと呼ぶ)を祀っています。
稲荷神を祀る他のお寺でも多くは吒枳尼天(荼枳尼天とも)を祀っています。
最上稲荷は稲荷神として最上位経王大菩薩(稲荷大明神)を祀っていますが、伝えられる姿形は荼枳尼天と類似しており、研究者の中には同一の神ではないか?と言う人もいます。
なお神仏習合時代、今は神社でも神宮寺等の名称があったお寺では「荼枳尼天」が祀られていたことがあります。
例えば伏見稲荷大社の神宮寺である愛染寺でも荼枳尼天が祀られていました。
一部の寺院では荼枳尼天以外の神様・観音様・菩薩様を稲荷神として祀っていることもあります。
稲荷神は基本的に女神
宇迦之御魂命にせよ保食神せよ、そして荼枳尼天にせよ、稲荷神は基本的に女神とされており、男神として祀っている寺社は稀です。
ただし副神として男神を祀っていることはよくあります。
また伏見稲荷大社の稲荷三神の一柱(神様の数え方は柱<はしら>)であり佐田彦神は男神です。
- 一般的に稲荷神=女神
- 副神や複数の柱のうちの一柱に男神が祀られている
以上、お稲荷様・稲荷神の系統についてでした。
口コミ